柔らかな黄金


 いつも几帳面に整えられている黄金色の髪が伸びていた。
 項靭帯が綺麗に見える後ろ姿が、今はシャツの襟に毛先が触れるほど髪が伸びている。私より短かった前髪も、今は同じぐらいか、少し長いぐらいか。本を読むその表情が、カーテンのような前髪によって遮られている。
 手を伸ばす。目にかかっていた前髪を耳にかけてやる。淡い色の目が私を捉えた。
 突然のちょっかいに獅子神は目を丸くし、すぐに悪戯を許す親のように表情を崩す。
「なんだよ。構ってほしいのか?」
「最近、忙しいようだな」
「え? ああ、まあ」
 獅子神が自身の前髪を指先だけで摘み、納得したように頷いた。
「長いの、あんま似合ってねえよな」
「私は好きだが」
「……」
 訝しむように目を細め、照れるように口を歪め、髪を弄っていた手を口許へと持っていく。解読の難しい獅子神が、ボソボソと喋る。
「……切らねえほうが、いいか?」
「短い方も長い方も似合っていると思うが」
「そーかよ」
「……強いて言うなら、表情が見える方が好ましい」
「……」
「なんだ、その顔は」
 ニヤニヤと、面白くて仕方がないといった顔を向けてくる。そんな獅子神の肩を軽く小突く。痛えって、と眉間に皺を寄せるが、その目はまだニヤニヤと笑っていた。
「さっさと髪を切ってしまえ、マヌケ」
「へいへい」
 気の抜けた返事をする獅子神を、もう一度だけ小突いた。


top / main